ちなみに……昨日、お風呂場で聞こえた物音はベルがベッドから落ちたせいだったらしい。
 なかなか人騒がせな猫……じゃなくて魔神だ。
「さ、さあ、冒険者ギルドに着いたよ。早く入ろう」
 シンディーの機嫌は悪いままだし、ベルはそれを見て笑っているし……これ以上この話題を続けていたら、変なことになりそうだ。
 だから僕は露骨に話題を変え、早足で受付テーブルに向かった。

「あっ、フィルさん。お待ちしていました。実はお願いがありまして……」

 受付嬢さんは僕を見るなり、そう話を切り出した。
「なんですか?」
「まずはこちらの依頼をご覧ください」
 そう言って、受付嬢さんが一枚の紙を差し出す。依頼票だ。
 横からシンディーも覗き込んできた。
「……『オブペシアの花』の入手ですか」
「はい。その花はご存知ですか?」
「いえ……聞いたことないですね。あまり花には詳しくないものですから」