今までのことが走馬灯のように甦る。
 やがて……。
「生き……たい」
 僕の口からはそんな言葉が零れていた。
「生きたい。僕はまだなにもしていない。力が欲しい! 力さえあれば、追放なんてされなかった! こんなヤツに殺されることもなかったんだ!」
 それは今まで感じたことのない、どす黒い感情だった。
 しかしいくら怒りの感情を滾らせても、現実は無常である。
 オークキングが棍棒を大上段に構え、真っ直ぐと振り下ろし──。

 ──よかろう。そなたの願いを叶えよう。

 その瞬間。
 頭の中にそんな声が聞こえた。
「……え?」
 次に──頭がかち割れるような頭痛。
 だが、それは刹那の後に終わった。
 それが始まりの合図だったのか──周囲の風景がスローモーションに見える。振り下ろされるオークキングの棍棒も止まって見えた。
「これは一体……」