シンディーが強化魔法の使い手だと分かった時、フィルはそう言ってくれた。
 嬉しかった。
 自分が貴重な魔法を使えることに──そしてなにより、フィルに褒められたことが、泣いてしまいそうなくらいに嬉しかったのだ。
 彼の顔を思い浮かべるだけで、シンディーは気持ちが上向きになる。
「あっ、そうだ。フィルさん……もう起きてるのかな。昨日のこと、あらためてお礼を言わなくっちゃ」
 シンディーはベッドから降り、服に着替える。
 そしてフィルがいる隣の部屋へと移動した。
「フィルさーん、昨日はありがとう──」
 ノックもなしにシンディーは扉を開けた。
 そして言葉を失ってしまう。
 そこには──上半身裸で、汗だくになっているフィルの姿があったからだ。
「あっ、シンディー。おはよう。でもノックくらいしてくれると、嬉しいかな?」
 フィルは両手両足でうつ伏せに体を支え、顔だけをこちらに向けた。