──ちょっと大胆すぎない!?

 あまりに目まぐるしい展開のため、彼女は自分が転倒しそうになったことも頭から消え、そう思ったのである。
 しかしフィルが相手なら、別にいいかとすら思えた。
 シンディーは覚悟を決めて目を瞑ったが、突如──フィルは興奮した面持ちで『すぐに服を着て、風呂場を出よう!』と彼女を宿屋の外に連れ出した。
 そしてその時、明かされた真実は衝撃的なものだった。
(まさかわたしが使っていたものが強化魔法だったなんて……夢にも思っていなかった)
 今まで自分の使う治癒魔法があまりにも効果が薄いことに、違和感を覚えたことは多々ある。
 だが、「どうせ自分なんて、こんなもの」と知らず知らずのうちに心にブレーキをかけていた。
 だからこそ、彼女自身も今まで気付かなかったのである。

『君は素晴らしい魔法使いなんだ』