呼吸をするだけでも、胸が痛くなった。
 意識が朦朧とする中──オークキングがゆっくりと歩み寄ってくる姿が見えた。

 ──このボロボロの剣じゃダメなんだ。

 あの分厚い表皮に、こんな剣──そして僕の力では傷さえも付けられない。
 さっきの攻撃で剣が折れなかったのが不思議なくらい。まるで金剛石に剣を突き立てたような感触だった。
 先ほどのひと振りは、僕の人生において最高の一撃だっただろう。
 だが、それでもオークキングにダメージが通った様子はない。
 ここから導き出される結論は──。
「ここで死ぬ……のか?」
 そんな当たり前のことだった。
 オークキングが余裕たっぷりに歩を進める。
 表情なんて分からないけれど、何故かオークキングの姿がギャロルと重なった。

 ここで死ぬ?
 なにもしていないのに?
 こんな呆気ない幕の引き方でいいのか?