シンディーは上半身を起こして、背伸びをする。
 窓のカーテンを開ける。朝の気持ちいい日光が差し込み、ぼんやりしていた頭がすっきりした。
 なんの変哲もない朝。
 だが──シンディーにとって、今日の朝はいつもより特別だった。
「昨日は夢のようだったなあ」
 そう呟いて、シンディーは昨日のことを思い出す。
 いつものようにミースネの森で薬草摘みをしていたら、運悪くゴブリンの群れに遭遇してしまった。
 死を覚悟した。
 治癒魔法士である自分には、まともな攻撃手段がないからだ。

 しかし──そんな彼女の前に正義のヒーローが現れた。

『説明は後! ちょっとしゃがんでて!』
 正義のヒーローはそう言って、あれだけいたゴブリンを一瞬で倒してしまった。
(あんなに強い人、初めて見た……)
 強さに憧れているシンディーは、彼のことが純粋にカッコよく見えた。
 彼はフィルと名乗った。