僕の説明に、彼女は黙って耳を傾けていた。
 どうして彼女は今まで、自分の使うものを治癒魔法だと思い込んでいたのか?
 それは強化魔法の使い手がかなり少ないからだ。
 しかし一方、戦局を一気に変えられる強化魔法は貴重視されている。
 だから強化魔法の使い手なんかいたら、どこの冒険者パーティーからも引く手数多になるのが現状だ。
 シンディーは自分がまさかそれを使えるとは、夢にも思っていなかったんだろう。
 自信のなさが裏目に出たわけだ。
「フィ、フィルさんの勘違いなんじゃありませんか? わたしがそんな……」
「シンディー。君はもう少し自分に自信を持つべきだ」
 僕は彼女の両肩に手を置き、真っ直ぐ見つめて言葉を続ける。
「君は素晴らしい魔法使いなんだ。これがあれば、どんな冒険者パーティーにも入ることが出来る。まだまだ効果は薄いけど──ちゃんと鍛錬すれば、君の強化魔法は絶対に伸びる」