「ちょ、ちょっと待ってください! そんな急にやられると、やっぱり心の準備が! 一分だけ待ってくれませんか? すぐに準備を済ませますから……」
「なにを言っているんだ! すぐに服を着て、風呂場を出よう!」
「へ、へえ?」
 シンディーはまだなにがなんだか分かっていない様子。

 僕の推測が当たっていれば、彼女の夢の一助をすることが出来る!

 手際よくお風呂場を出て、ふたりとも服を着る。
 さっきまでの狂騒が嘘のようであった。
 自分の体に起こっている変化がなくならない前に、僕たちは急いで部屋を後にするのであった。


「やっぱり……体が軽い」
 宿屋を出て、ちょっと歩いたところにある一本杉の下。
 そこで魔剣を何度か振ってみて、僕はそう確信するのであった。
「確かに、ゴブリンと戦っていたフィルさんより動きが速いような……? でもそれは疲れが取れたからじゃないんですか?」