男たちはバカにしたような薄笑いを浮かべて末吉を小突いた。
「末吉っ!」

 あっけなく末吉は転ぶ。

「威勢だけはいいんだな。爺」

 いつの間にか牛車が現れて、その前に派手な狩衣を着た男がいた。

「捜しましたよ。希々姫」

「――あなたは?」
「毛野少将、そなたの夫だ」

「な、なんですって?」

「さあ、いらっしゃい」

 笑顔とはこんなに恐ろしいものなのか。
 末吉を後ろにして、梅女と震えながら抱き合った。

「まったく、いいきなもんだ」と、市女笠の女が現れた。

 垂れ衣から顔を覗かせたのは、叔母だ。

「お前たち、邪魔なふたりをどうかしてくれ」

「はっ!」

 男たちがにやにやしながら私たちを取り囲む。

「ほら、爺立てよ」
「やめてっ!」

 男たちは全部で五人はいる。
 こんなに大勢じゃ、なにもできない。

「女は俺がもらうから、お前爺をなんとかしろ」

「や、やめて」
 ずるずると引きずられる末吉と、私から引き剥がされる梅女。

「お願い、お願いだから!」

 毛野少将が手を差し出した。
「あなたがおとなしくついてくるなら、なにもしませんよ」

「姫さまっ!」