東宮は清涼殿で待っていた。
「ああ、来たか」
「なにかわかったのか」
「その件で帝がお前に会いたいそうだ」
主上が?
となると、やはり。
焦る気持ちを抑えて東宮の後につく。
主上はごく側近だけを残して、待っていた。
「朝霧よ、これはどのような経緯で手に入れたのか、詳しく話してはもらえぬか」
主上の手には例の石帯がある。
知りうる限りを話した。
途中、主上は袖を目にあて、静かに話を聞いていた。
「弟のものに違いない」
それではやはり。
「賊に襲われ、弟は腕を失った。思う人がいるとは言っていたのだ。傷口は悪化するばかりで、高熱にうなされながら、こうなった以上彼女を幸せにはできないと悩んでいた。彼女も同じ目にあってしまうかもしれないと……。そして、相手が誰かを聞く前に……」
「それでは」
「母は恐ろしい人だ。弟の母を憎み遂には死へ追いやった。弟が臣籍降下しても安心できず。もしかすると、いや、弟を襲った賊は――」
そこまで言って主上は右手で顔を覆う。石帯を持つ左手は震えていた。