「全部、朝霧さまへの文です。たまにはお読みになってお返事を書いてあげてください」

 今まで彦丸に言って適当に処分させていた。
 見たくもないときつく言ってあるから、彦丸と希々が対応していたのだろう。

「私はひとつももらっていないです。くれる方なんて、いるはずないじゃないですか」
 それは吾が許さぬと、脅しているからだが。
 しょんぼりとする希々を前にすると、ちくりと心が痛む。

「まあ、まあそう言うな。恋文など欲しくはあるまい?」
「欲しいですっ」

 あはは。
「よいではないか、ずっと――」
 ずっと吾の側にいろと言おうとして、妙に心が疼いた。

 三条での月見は、使用人も含め皆が一緒になって楽しんだ。
 歌い踊り、飲んで食べて。
 やがて希々とふたりになった。

「朝霧さま、まだお休みにならないのですか?」

 希々は酒に弱いようだ。
 舐めるようにしか飲んでいないのに、頬は赤いし目はとろんとして眠そうだ。