「ええ、すみません」
 なにしろ恋文を預かったらその場で捨てろと言われている。
 いくらなんでも捨てるなんてできないし、お願いだから私に文を預けないでと心で祈る。

 女官たちに付いていくと、女五宮さまの乳母さまに紹介された。

「人手が足りなくて困っておったのじゃ。期待しておるぞ」

 乳母さまは、微笑むと線のように目が細くなって目尻が下がる。
 話し方も含めてとても優しそうだ。

「私は体が丈夫でございますから、なんなりと仰ってくださいませ」
「ほほっ、それは心強い」

 胸を張って申し上げると乳母さまは、口もとに扇をあてて楽しそうに笑った。