細い弓なりの月が照らす僅かな明かりではわからないが、立派な邸には違いない。釣殿の下で池がきらきらと輝いている。

 邸から出てきた女性と牛飼いが話をしている間、私たちは無事を喜びあった。

 そういえばあの牛飼い、通りで会った感じの悪い男とは違う。きっと牛飼いだけでも何人もいるんだろう。

「とにかくひと安心ですね」
「よかった。皆無事で」

 末吉は目をしょぼしょぼにして泣き始めた。
「なによりじゃ……」

 私の胸にも熱いものがこみ上げてくる。
 あのままいればどうなっていたか。

「姫さま……」
 梅女も泣き、私たちは三人肩を寄せ合って涙を流した。