梅女と末吉の進めもあり、母の形見の品だけを布に包んで背中に背負い下屋を出た。
 もちろん末吉も梅女も一緒である。

 そうじゃなければとても出てはいけないから。

 ところが――。

「おい。どこへ行く」
 強面の下男ふたりが立ちはだかった。

 叔母がこの屋敷に連れてきた屈強な男である。
 手には硬そうな長い棒。あんなもので叩かれたら、ひとたまりもない。

 末吉が私の前に立つ。
 怖いだろうに梅女が一歩前へ出た。

「寺に行くんだよ。なんか文句でもあるのかい」

「はっ! こんな闇夜になにが寺だ」
 男はせせら笑う。

 心配なのは、どこかにいるはずの朝霧さまだ。
 下屋の外で待っていると言ったのだから近くにいるはずだけれど、姿は見えない。男たちに見つからないといいけれど。

 ごくりと喉を鳴らして、私は梅女のさらに前に出た。
「お前たち、私に手を挙げるつもりなの?」

「姫さまを心配しているんですぜ? こんな夜に出かけちゃ危ないでしょう?」

 にやにやと薄ら笑いを浮かべながら、男らは行く手を塞ぐように並ぶ。

 今まではこんなふうに干渉してこなかったのに、ここ数日様子が違う。朝霧さまに知れるのを警戒しているのか、もしくは私の結婚に向けて、見張るように言われているのかもしれない。

 ふぅー。
 大きく息を吐いて、気持ちを落ち着けた。
 私は目の端で梅女に合図し、梅女は微かにうなずく。その刹那――。