叔母が戻ってきて「礼は私からちゃんと言っておくから、お前は向こうへお行き」と、私を手で払う。

「みっともないその醜い姿を出すんじゃないよ」

「――はい」
 わが身を振り返れば衣だけでなく、髪にまで泥がついている。
 醜いと言われればその通りで返す言葉もない。

 とりあえず衣を着替え、汚れた衣を洗っていると梅女が来た。

「中の様子はどう?」
「勝手に盛り上がっておりますよ」

 叔母と山吹の笑い声が庭の方まで響いてくる。

「姫さま私が洗いますから」
 私から衣を取り上げた梅女がため息をつく。
「こんな生活いつまで続くんでしょ」

「うーん」
 私にもわからない。

 叔母たちは母が亡くなったときに心配して来てくれたのだ。

 自分たちも女所帯だし寂しいから一緒に暮らそうと言われて、叔母は九条の家を引き払って引っ越してきたのである。

 それでも最初のうちは優しかった。