俺の名前は、中毒組の若頭、とらじろう。
確か、抗争中に俺は……。
目の前は、真っ白な雲が一面に広がっていた。
ここは天国か?
「とらじろう。中毒組のとらじろうよ……」
一筋の光りと共に、美しい女神が現れた。
「なんだってんだ? ここは……あんたは誰だ?」
「私はこの世界の神です。シャブ中で死んだあなたを召喚したのです」
「ウソだろ……俺は鉄砲の弾食らっておっ死んだんじゃ……」
「いえ、ただのオーバードーズです」
我ながら、幸せな死に方したんだな。
「そんな、クズのあなたにチャンスをあげます」
「は?」
「この世界を救ってください」
女神が言うには、この世界を魔王から救ってほしいのだとか。
俺がこの異世界で生きていくため、チートスキルをくれるという。
だから、俺は現世でも役立ったものを、女神に頼んだ。
異世界に舞い降りた俺は、まず国王をシャブで操り、城内を違法薬物(ユニークスキル)で腐らせて、マインドコントロールしてやった。
全兵をシャブ中にして、泡吹きながら魔王軍にカチコミ入れてやるのさ!
「てめぇが魔王組の組長か!?」
聖剣ドスカリバーを構え、俺は魔王に奇襲をかける。
「人間の分際で……このわしに」
魔王が毒の息を吐く。
だが、そんなことに臆する俺じゃない。
シャブが常に体内に入っているから、いつでもハイなのさ。
「なっ! わしの毒がきかぬだと! 貴様、まさか女神の聖水を……」
「そんなもん使ってねーさ。俺は転生スキルをシャブ漬けにしているのさ! だから毒なんてハイにもらないぜ!」
魔王は腹を切り裂さかれると、膝をつく。
「このわしが……お前ごときに……」
「ガタガタうるせぇ! お前もシャブを食らえ!」
引き裂いた腹のなかに、真っ白い粉をぶち込んでやった。
一分後……。
「……うわぁい♪ ここはどこ?」
どうやら、幼児退行しちまったらしいな。
いきなり末期になるとは、ハッピーな奴だぜ。
「フッ、天国だ!」
シャブ漬けになった異世界は、違法薬物でみんなハッピーな気持ちになれましたとさ。
了