これで何回目だろう。国境監視の任務から戻ってきてからの約一月半の間に、フィリカが受けた呼び出しは。
十日に一回か二回の割合で呼び出されているはずだから、少なくとも六・七回目にはなる。そして、レシーが知る限り、理由は毎度同じだった。
……彼女の、任務中の行方不明に関する噂。
当然ながらレシーは直接に事態を知りはしなかったが、同時期に国境へ行っていた訓練生時代の同期から話を聞かされた。その後、数人の知り合いを捕まえて仕入れた情報を総合すると、次のような経緯があったらしい。
フィリカの行方不明は、当番の翌朝に戻らなかった段階ですぐに発覚したという。さらに彼女だけでなく、行動を共にしていたはずの新入り兵士と、その夜は当番ではなかったウォルグまでもが姿を消していた。
夜になって新入りだけは宿舎に戻ってきたが、状況ははっきりしなかった。彼が上官の問いに答えることを拒んだからだ。問い詰めた挙句にようやく、任務中に見知らぬ相手に襲われ、退けようとしているうちにメイヴィル副長とははぐれ、自身も道に迷った──とだけ説明した。さらに詳細を求めると、どういうわけかひどく怯えて錯乱しかけたため、それ以上の尋問は諦めざるを得なかった。
遅れること数日して、フィリカが残骸みたいな上着を着て──というのは直接に見た者の表現であるが──戻ってきた。彼女も尋問を受けたが、新入りの話を裏付けることを言うだけで、戻るまでの詳細はどれだけ問い詰めても語らなかった。
……そしてウォルグは、任務の期間が過ぎ、首都カラゼスへ帰る日になっても戻ってこなかった。
当初は一部でしか囁かれていなかった憶測が、日を経るごとに知る者の範囲を広げ、その時点では確信に近い疑いへと変化していた。帰隊した時のフィリカが腕に傷を負い、さらには頬に殴られたような痣を残していた事実がそれに拍車をかけた。──つまり、ウォルグに襲われそうになったフィリカが、相手を殺してしまったのではないかと。
鞭打ちの一件はほとんどの兵士が見るか聞くかしていたし、入隊からしばらくの間はウォルグがフィリカに執着していたことも、少なからぬ人数が知っていたからだ。
レシーが戻ってきた彼女に会った時には、すでに顔の痣はなくなっていたし、斬られたという右腕の動きもさほど不自然ではなかった。何も聞いていなければ、レシーでさえすぐには気づけなかったかもと思うほど、何事もなかったような様子だった。
だが、念のため噂について尋ねてみた時、彼女はわずかに動揺を見せた。冷静な表情は変わらなかったが、目が一瞬落ち着きをなくしたのだ。
無表情の多さに惑わされがちだが、フィリカが表に出さない感情は、目を見ていれば意外に読み取れる。本人が気づいているかどうかは分からないが、子供の頃からそれは変わりなかった。
その時も動揺の色が浮かんだが、まばたきするうちに消えた。そして、何もしていないと彼女は言いきった。非常に強い口調で。