大陸の南東に位置する、アレイザス王国。
かつての大国が分裂して興った国の最北端、大陸を二分する山脈の麓近く──他の町や村からは距離を置いた位置に、その小さな集落はある。
それは村とも言えないほど小規模なもので、家屋は二十ほど。いずれも土壁に藁葺き、三部屋程度のささやかな造りである。それらが建つ一帯を半ば取り囲むように畑が耕され、野菜等の作物が育てられている。
そして畑を通り抜けた先、少し山を分け入った奥には、広場と言って差し支えない程度に開けた一帯がある。元々は今ほどに広くない空間だった所を、住み着いた者たちが時間をかけて切り開き、現在の広場を作り出した。
日の傾きかけた今の時間、そこには十人近い若者が集まっていた。大半は十代後半から二十歳前後の男たちで、疲れきった様子で座り込んでいる。ようやく今日の、彼らにとっての日課が終わったところであった。
指導役は二十代半ばの青年が二人。そのうちの一人が解散を告げたが、すぐに立ち上がろうと動いたのは半数ほどで、残りはへたり込んだままでいる。
その光景を見回し、もう一人──薄い金髪の青年は、無言でその場を離れた。片割れの同僚が、まだ動けない面々に何か言っているのを聞きながら、彼は集落に戻る山道を下り始める。
道を半ばほど進んだところで、同僚──仲間うちでは最も古くから知る相手、ラグニードが追いついてきた。振り返って見ると、その後ろからはまだ誰も来ない様子である。
ラグニードもそれを承知しているようで、傍らまで近寄ってきてすぐに「どう思った?」と聞いてくる。一応は用心して、小声であるが。
先ほどの日課──訓練の結果についてだ。
「半々ってとこか、今までの様子では」
「……いや、一対二だな」
との返答に、ラグニードは「そうか?」と首を傾げた。
「まあ、未だに最後の合図で立ち上がれないのは言うまでもないとして。他に『一』に入れられないとおまえが思うのって誰」
「黒髪の二人」
「っていうと……ああ」
レムニスとナージン。従兄弟同士と言うだけあって、雰囲気のよく似た二人である。筋は悪くないし度胸もありそうだというのが大方の意見だったが、
「──何か引っかかったのか、アディ」
そこまで話した時には集落の手前まで来ていた。