きみと初めて出逢ったのは、遠い夏の日――。

 あんなに大好きだったのに、なぜか顔も思い出せなかったきみ。
 祖母の営む骨董店の名と同じ響きだった、その儚げな名前を、僕は一生忘れない。

 きみの名は、ほたる。

 これから新たな出逢いがあるかもしれない。家庭を築いて、子供を持つこともあるかもしれない。
 今はまだ、そんな未来があるとは思えないけれど、あの遠い日に、きみとめぐり逢えたのだから。
 奇跡はふと気が付くと、ありふれた日常の中に転がっているものなのだ。





 ほたる。
 僕は、この街で生きていくよ。