「いらっしゃいませ」

 八月になると、風通しのいいほたるび骨董店にもさすがに熱気がこもる。
 クーラー嫌いの透は、扇風機を三台持ち込んで暑さをしのいでいた。一台はレジの後ろにある透の指定席に向け、あとの二台は店舗の中の空気を循環させる。

「ごゆっくり、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 ちらちらと透を見ながら、二人連れの客がささやきあっていた。
 なんだろう。最近また、若い女性客が妙に増えた気がする。今話題になっているドラマの舞台は、古城市から別の場所に移ったはずだけれど。

「あの」
「はい」
「写真、撮ってもいいですか?」
「いいですよ」
「わぁい、やった」

 女性達が華やいだ声を上げた。ほかに客もいないし、まぁいいだろう。

「じゃあ、真ん中に入ってくださいね」

 透の左右に、なんだかひらひらした服装の女性達が陣取る。透は焦って、椅子から落ちそうになった。

「え? 僕も入るの?」

 戸惑う透に、うんうんとうなずく女性客。

「もちろん! イケメン店長さんがいるって、SNSで話題になってて」
「え? ええっ?」

 きゃっきゃっと賑やかにはしゃぐ女性達に結局何枚も写真を撮られ、透はぐったりとしてその日の午後を過ごした。

 お気に入りのグラスに炭酸水をそっとそそいで、しばらくその泡を眺める。商売繁盛はありがたいが、今後写真は断ろうと透は固く心に誓った。