2023年8月。
 今日から、いよいよ、始まる。高校を卒業して、というか「させられて」、私が下した決断が、「手に職つけよう」「教師になろう」だった。
 今日から北海道の高校で、教育実習だ。春から河野先生に鍛えてもらったから、大丈夫。この調子でなんとかやりきろう! と思っていたのだが。

 「え」

 最終日を前に、祖父が亡くなった。連絡がきたのは2時間目が終わったときだった。葬儀が最終日に入ったから、葬儀に出るか、実習を続けるか選ばなくてはならない。

 「校長先生、と言うわけなんです。」

 私の中では、実習に出るしかないと思っていた。

 「ダメ。お葬式に行きなさい。お昼に全校集会やるから、それが終わったら、すぐにご家族のところに行きなさい。」

 校長先生はすぐに指図してきた。

 「でも、実習できないのは困ります。」

 「あのね、実習はなんとかなるけど、お葬式はそうはいかないでしょ! 最後の日にいないならいま『最後の時間』を作ります。校長権限で! 僕もそうしてもらったし、コロナ休校の時もね、そんなことがあったのさ。ちゃんとあいさつ準備してよ!」

 校長はあのコロナのとき、青空高校で教頭をしていたらしい。「思ったときに伝えられないのが、人間、一番辛いんだ」。最初の生徒に「さよなら」が言えないと、おじいちゃんお見送りしないと、後悔するな。

 よし。

 昼休み。震えをおさえて、体育館へ向かった。