3年生になって、2回目の英語。正確には3回目か。1回目は普通に授業というか、オリエンテーションで、2回目は1時間いっぱい学力テストだった。ずっと休校にしておいて、こんな勉強していないときに学力測られても困るんだけど。
長すぎた春休みに、思い切って髪をベリーショートにした。もう染めるなんてバカなことしない。おかげで海苔のようだった黒い髪はなくなり、すっかり地毛の明るめの髪色に戻った。この髪、河野先生に褒めてもらいたかったなぁ…。
チャイムが鳴る。授業が始まる。目の前にいるのは河野先生ではなく、よく分からない若い女。なにかしゃべっている。英語ではないなにか。ひとことひとことなんて覚えていない。でも、授業が始まる頃には私の目は涙であふれていた。
そうだよ。私、辛いんだよ。
河野先生に「ありがとう」って言えなくて、祐美さんに「ありがとう」って言えなくて、辛いよ! 「ありがとう」がのどの奥で出たがっているのに、なんで言えないの?
「河野先生の授業が受けたい」って書いたのは私。でも、泣いてるのは私だけじゃない。みんなどこかで思ってるんだ。
私が泣いてるのは、この先生のせいじゃない! 河野先生に会いたいから。「ありがとう」って言いたいから! なんで弱いところついてくるの?
「私も前の学校の授業が突然なくなりました。言い残したこと、やり残したことばっかりです。たぶん、河野先生も同じだったんじゃないかな。みなさんも、同じなんじゃないかな? ちょっと遅くはなったけど、言った後悔より、言えない後悔です。今の気持ちを伝えませんか?」
便箋が配られてすぐ、私は河野先生への感謝を書きつづった。すごく感謝してること、そして今、すごく辛いこと。たぶん、辛いのは先生と過ごした時間が大事だったからじゃないかな? と思っていること。
泣きながら、書いた。英語で書いてって言われたけど、全部日本語で書いた。だって、一番伝わると思った言葉だから。
私が書いたのは課題じゃない、手紙だ。
書いたらなぜかすっきりした。辛いのがなくなったわけじゃないけど、モヤモヤと溜まっていった怒りがしずまっていった。
程なくして、また休校が決まった。
次は6月まで。
休校中に吹奏楽コンクールの中止が決まった。
私の青春は、2年生で終わったんだな。もっと頑張っておけばよかった。「次」、私にはなかったんだな。
私に吹いた春の風は、頬を冷たく切り裂いた。
長すぎた春休みに、思い切って髪をベリーショートにした。もう染めるなんてバカなことしない。おかげで海苔のようだった黒い髪はなくなり、すっかり地毛の明るめの髪色に戻った。この髪、河野先生に褒めてもらいたかったなぁ…。
チャイムが鳴る。授業が始まる。目の前にいるのは河野先生ではなく、よく分からない若い女。なにかしゃべっている。英語ではないなにか。ひとことひとことなんて覚えていない。でも、授業が始まる頃には私の目は涙であふれていた。
そうだよ。私、辛いんだよ。
河野先生に「ありがとう」って言えなくて、祐美さんに「ありがとう」って言えなくて、辛いよ! 「ありがとう」がのどの奥で出たがっているのに、なんで言えないの?
「河野先生の授業が受けたい」って書いたのは私。でも、泣いてるのは私だけじゃない。みんなどこかで思ってるんだ。
私が泣いてるのは、この先生のせいじゃない! 河野先生に会いたいから。「ありがとう」って言いたいから! なんで弱いところついてくるの?
「私も前の学校の授業が突然なくなりました。言い残したこと、やり残したことばっかりです。たぶん、河野先生も同じだったんじゃないかな。みなさんも、同じなんじゃないかな? ちょっと遅くはなったけど、言った後悔より、言えない後悔です。今の気持ちを伝えませんか?」
便箋が配られてすぐ、私は河野先生への感謝を書きつづった。すごく感謝してること、そして今、すごく辛いこと。たぶん、辛いのは先生と過ごした時間が大事だったからじゃないかな? と思っていること。
泣きながら、書いた。英語で書いてって言われたけど、全部日本語で書いた。だって、一番伝わると思った言葉だから。
私が書いたのは課題じゃない、手紙だ。
書いたらなぜかすっきりした。辛いのがなくなったわけじゃないけど、モヤモヤと溜まっていった怒りがしずまっていった。
程なくして、また休校が決まった。
次は6月まで。
休校中に吹奏楽コンクールの中止が決まった。
私の青春は、2年生で終わったんだな。もっと頑張っておけばよかった。「次」、私にはなかったんだな。
私に吹いた春の風は、頬を冷たく切り裂いた。