(春音side)
わたしは夢を見ていた。
誰かの声がする。
真っ白な夢の中……。
左腕を押さえて泣きじゃくる子供の頃のわたし。
ちから一杯叫んだ気がするけど言葉にできなかった……。
「独りにしないで」
道の向こうに髪の長い女性が居るのが見えた。
彼女はわたしのことを抱きしめようとして腕を伸ばしてきた。
微笑んでいる表情が良くわかった。
でも、わたしは、怖くなった……。
だから、彼女の脇をすり抜けて、走っていった。
腕の痛みを我慢して、必死に走ったんだ。
だれも居ないところまで……。
わたしはここで目を覚ました。
なんだか悲しい夢だった。
それに照らし合わせているかのように、強い風が吹いている。
なんだか、こういう夢ばかりだ。
いつも起きる時間には早いけど、目覚まし時計のスイッチを切った。
窓を開けると、強い南風が吹いている。
鳴いているような気がしたのは気のせいだろうか。
テレビをつけると、お天気お姉さんの陽気な声が流れてきた。
「今日は<春一番>が吹くかもしれません。
明日は春の陽気となり、やっと花冷えの季節は終わりと思われます……」
なるほど、春一番か。
わたしは朝ご飯を食べて、学校に行く準備をした。
その歩調に合わせて、わたしの心にも<怖いもの>が吹いていたんだ。
・・・
学校の帰り道。
商店街を歩いているわたしは、ある人物に会おうと思っている。
坂を下ったところにある十字路から見えてくるのは、空色の外観をした喫茶店。
わたしはそちらに向けて歩いて行った。
……でも。
怖いからいいや。
まるで霞がかかっているような気分だった。
わたしはひとり呟くと、仕方なく元来た道を引き返すことにした。
すると、目線の先にカメラを抱えた彼がいることに気づいた。
わたしは微笑んで手を振った。
彼も気づいたようで、手を振り返してくれたんだ。
これだけのことでも何だか安心できた。
・・・
わたしは夢を見ていた。
誰かの声がする。
真っ白な夢の中……。
左腕を押さえて泣きじゃくる子供の頃のわたし。
ちから一杯叫んだ気がするけど言葉にできなかった……。
「独りにしないで」
道の向こうに髪の長い女性が居るのが見えた。
彼女はわたしのことを抱きしめようとして腕を伸ばしてきた。
微笑んでいる表情が良くわかった。
でも、わたしは、怖くなった……。
だから、彼女の脇をすり抜けて、走っていった。
腕の痛みを我慢して、必死に走ったんだ。
だれも居ないところまで……。
わたしはここで目を覚ました。
なんだか悲しい夢だった。
それに照らし合わせているかのように、強い風が吹いている。
なんだか、こういう夢ばかりだ。
いつも起きる時間には早いけど、目覚まし時計のスイッチを切った。
窓を開けると、強い南風が吹いている。
鳴いているような気がしたのは気のせいだろうか。
テレビをつけると、お天気お姉さんの陽気な声が流れてきた。
「今日は<春一番>が吹くかもしれません。
明日は春の陽気となり、やっと花冷えの季節は終わりと思われます……」
なるほど、春一番か。
わたしは朝ご飯を食べて、学校に行く準備をした。
その歩調に合わせて、わたしの心にも<怖いもの>が吹いていたんだ。
・・・
学校の帰り道。
商店街を歩いているわたしは、ある人物に会おうと思っている。
坂を下ったところにある十字路から見えてくるのは、空色の外観をした喫茶店。
わたしはそちらに向けて歩いて行った。
……でも。
怖いからいいや。
まるで霞がかかっているような気分だった。
わたしはひとり呟くと、仕方なく元来た道を引き返すことにした。
すると、目線の先にカメラを抱えた彼がいることに気づいた。
わたしは微笑んで手を振った。
彼も気づいたようで、手を振り返してくれたんだ。
これだけのことでも何だか安心できた。
・・・