彩~清か色の日常、言葉のリボン

(春音side)


ゆう君が目の前に居る。

冬の空気は冷たくても、それだけでこの場が温かくなるような気がした。
再会の喜びを太陽が照らしてくれているようだった。

しかもこんな知る人ぞ知る場所で。
わたしは本屋にある雑誌で知って、リハビリがてら行ってみようと思っただけなのに。
まさか再会できるなんて思っていなかった。

「君も曲好きなんだね」

彼はこう聞いてくれるけれど。

「うーん。
それもそうなんだけど、たまたまかな」

わたしとしてはこう答えるしかない。
散歩して聴いただけなのに、わたしが一目惚れしただけなんだ。

前から気になっていたけれど、後ろめたいことをわたしは聞いてみた。

「あのさ……。
みんなは元気にしているのかな」

不安なときに少し上目遣いになるのは、わたしの癖みたいなものだ。

「うん、みんな元気でわいわいやっているよ」

「そっか、それ聞いて安心したよ」

わたしは緊張を吐き出すように一息ついた。
そして、彼を見ながら笑顔を作ったんだ。

ここでふたりが再会したはことは、愛らしい出来事だろう。
だから、ゆう君はある提案をしてくれた。

わたしは、つい一瞬だけきょとんとして。

でも、嬉しいから笑顔で頷いた。

 ・・・

わたしたちは近くのカフェに行くことにした。

ゆう君はメニューを軽く見ただけで、すぐわたしに渡してきた。
そのさりげない気遣いは、やはり彼ならではだと思う。

「何にするかな」

「うーん。
ダージリンとか美味しそうだなあ、ホットにしよう」

ここは自家焙煎が特徴なカフェらしかった。
<セプトクルール>でも感じた、コーヒーの香りが漂っている。
甘い香りっていうのは素敵なのに、飲んでみると苦さというのが先だってしまう。

「だってコーヒーって苦いじゃん」

え?
わたしが今考えていたことだった。
テレパシーが伝わったように、同じことを口にしている。
気持ちが一致したようで、なんだか嬉しかった。

ふたりして、つい笑ってしまった。

やがて、ウェイトレスが注文を聞きにきてくれた。

「アイスティーのストレートと、ホットのダージリンを……」

あ、待って。
私は彼の言葉に重ねるように、急いで注文し直した。

「やっぱりアイスにするよ。
アイスティーのストレートをふたつで」

注文が終わって、彼はこちらを見つめていた。
その表情は軽い驚きが見て取れる。

「……お店の中って、暑くって。
つい、ね……」

わたしはこう繕って答えた。
自分でも顔を赤くしているのが分かる。

だって、一緒のやつにしたかったから。
気持ちをユニゾンするみたいに、一緒にしたかったから。
急に気が変わったんだ。

それは、安心感があるんだ。

 ・・・