(ゆうside)
12月の最後の土曜日、僕は久しぶりに写真を撮りに出かけた。
都会のとある大通り。
CDアルバム<401ストリート>はこの通りの名称で、どこかに録音スタジオが面している。
ここはファンあこがれの場所なんだ。
歩道橋の上から道路に向けてファインダーを覗いてみた。
年末だから人通りが多いと思っていた。
全くそんなことはなく、たまに車が通るだけだ。
歩道橋には歩いている人もいない。
やけに静かに感じられた。
なんだか都会の喧騒が嘘のように消えている。
瞑想させるような雰囲気があって、とても素晴らしい空間だなって思った。
しばらくその景色を眺めてみた。
車が一台通り過ぎていって、また静かな時間が流れている。
僕はふと、これまでの出来事を思い返していた。
はじめて一目惚れを経験した春。
彼女のことを少しずつ知った夏。
恐怖を覚えながらも勇気を振り絞った秋。
居ない寂しさを堪えていた冬。
頭の中は春の女の子のことで一杯になっていた。
だから、歩道橋の片隅で同じように道路を眺めている人物に気を止めず、独り言をつぶやいた。
「春ちゃん、元気にしているかなあ」
僕の台詞を聞いたのか、その人物はゆっくりとこちらを見てきた。
視線に気づいた僕もそちらに顔を向ける
ふたりの目が合った。
ビルの風に煽られて揺れる茶色のボブショート。
きれいな鳶色の瞳。
その姿には見覚えがあった。
「春、ちゃん……」
僕は思わず彼女のニックネームを口にしていた。
「あっ、あの……。
わたし春にちなんだ名前で。
みんなから<春ちゃん>って呼ばれてるんだよ」
彼女はなぜか自己紹介をはじめてしまう。
嬉しそうでも、恥ずかしそうでもある不思議な笑顔をしていた。
赤く染められた頬が白いダッフルコートに良く映えている。
「……覚えてる?」
もちろん覚えている。
はにかみながら尋ねる仕草は、いつもの彼女の表情だ。
その謎の質問は、実に彼女らしい。
嬉しい再会はいつものように少し可笑しくて。
松葉杖を外して、彼女はしっかりと立っている。
・・・
12月の最後の土曜日、僕は久しぶりに写真を撮りに出かけた。
都会のとある大通り。
CDアルバム<401ストリート>はこの通りの名称で、どこかに録音スタジオが面している。
ここはファンあこがれの場所なんだ。
歩道橋の上から道路に向けてファインダーを覗いてみた。
年末だから人通りが多いと思っていた。
全くそんなことはなく、たまに車が通るだけだ。
歩道橋には歩いている人もいない。
やけに静かに感じられた。
なんだか都会の喧騒が嘘のように消えている。
瞑想させるような雰囲気があって、とても素晴らしい空間だなって思った。
しばらくその景色を眺めてみた。
車が一台通り過ぎていって、また静かな時間が流れている。
僕はふと、これまでの出来事を思い返していた。
はじめて一目惚れを経験した春。
彼女のことを少しずつ知った夏。
恐怖を覚えながらも勇気を振り絞った秋。
居ない寂しさを堪えていた冬。
頭の中は春の女の子のことで一杯になっていた。
だから、歩道橋の片隅で同じように道路を眺めている人物に気を止めず、独り言をつぶやいた。
「春ちゃん、元気にしているかなあ」
僕の台詞を聞いたのか、その人物はゆっくりとこちらを見てきた。
視線に気づいた僕もそちらに顔を向ける
ふたりの目が合った。
ビルの風に煽られて揺れる茶色のボブショート。
きれいな鳶色の瞳。
その姿には見覚えがあった。
「春、ちゃん……」
僕は思わず彼女のニックネームを口にしていた。
「あっ、あの……。
わたし春にちなんだ名前で。
みんなから<春ちゃん>って呼ばれてるんだよ」
彼女はなぜか自己紹介をはじめてしまう。
嬉しそうでも、恥ずかしそうでもある不思議な笑顔をしていた。
赤く染められた頬が白いダッフルコートに良く映えている。
「……覚えてる?」
もちろん覚えている。
はにかみながら尋ねる仕草は、いつもの彼女の表情だ。
その謎の質問は、実に彼女らしい。
嬉しい再会はいつものように少し可笑しくて。
松葉杖を外して、彼女はしっかりと立っている。
・・・