(春音side)

わたしは久しぶりに外出をした。

午後の昼下がりなのに空気はだいぶ冷たい、だいぶ季節が進んでいるようだった。
もう冬が隣にいるような気がする。
仕方なく、おろしたてのコートに身を包む。

松葉杖なしで、どこまで行けるだろうか。


バス通りを歩いていると、わずかな違和感を覚えた。
なんだろう。
その場に立ち止まって、辺りを見渡してみる。
でも、なにも分からないままだった。

仕方なくしばらく歩いていると、目の前に正解が見えた。
なるほど、あたらしいお店が出来ている。
アクセサリーショップのようだった。

普段のお買い物は商店街で済ませるから、この辺はあまり行くことはない。
気づかないのも無理はないかな。

出来れば駅ビルまで行ってみようと思っている。
文房具屋や洋服を眺めるつもり。

でも、そこで出会いがあるとは思わなかった……。

駅までは気楽に行くことができた。
ここで迷ったのは、ロータリーをどうやって上がろう。
エスカレーターか階段か少し考えて、階段を使ってみることにした。

コンビニで何気なくチョコを買って、色んなお店を眺めてみる。
今日はあまりお金を持っているわけじゃない。
だから本当にウインドウショッピングのつもりだ。

やがて、CDショップにたどり着いた。
そこに貼られているポスターにわたしの瞳は引き寄せられてしまう。
そのまま視聴コーナーに足が運ばれる。

わたしの好きなものは一目惚れなのだから……。


だいぶ疲れてしまったわたしはカフェで休んでいる。
さっき階段を使ったのが悪かっただろうか。

手にしたミルクティーは湯気が踊っていて。
ほのかな温かさは不安をほぐすような心地よさを感じさせた。

店内は赤や緑で彩られていて、この季節ならではのBGMがピアノ調で流れている。
それで、やっとクリスマスが近いことに気づいた。

特に入院してからは、季節を感じることが少なかった。

ただ毎日を繰り返しているだけのような気がした。
なんだか寂しかった。

そんなことを考えながら駅ビルの入り口に向かっていた。。
考え事が過ぎたのか、目の前の人物に気づかずぶつかってしまった。
思わず、ひゃ! って声をだしてしまう。

わたしは骨折した方の脚をひねってしまい、その場にしゃがみ込む。
でも、相手のサラリーマンはそのまま行ってしまうのだった。

助けてくれたのは、冬の女性だった。

 ・・・