(春音side)

病院を出る頃には雨は止んでいた。

タクシーから見える日差しは柔らかに、力強く降り注いでいた。
それに照らされる木々が輝いている。
こういうのを”光の春”って言うんだっけ。

涙が出そうでした……。
とってもきれいな、久しぶりに見る彩りのある世界が素敵だった。


アパートの鍵を開けて、わたしは玄関で両手を合わせた。
きちんと気持ちを込めて言葉を口にした。

「春、ただいまです」

靴箱の上に置かれた家族写真に写る両親の顔は、どういう訳か安堵しているように見えた。
わたしの状況は普通じゃないけれど。
ここに来れば家族に会えるんだ。

その嬉しさを噛みしめても良いのかなって思う。