(春音side)

わたしは、彼と別の方向に歩いていった。
家のある方角だ。

「……なんでだろう」

歩きながらぽつりとつぶやいた。
なんでだろう、わたしから話しかけていた気がする。
自分から話すのはもしかしたらはじめてなのかもしれない。

楽しい時間だった。

爽やかな春の陽気がわたしたちに降り注いでいた。
なんだか、そんな嬉しさを感じさせる出来事だった。

君が相手だという理由だったら、嬉しいな。

手を合わせてお母さんに報告しよう、素敵な出来事を。
もしかしたら、高校生活は変わるのかもしれない……。

吹いている風はなんだか心地よかった。