(アヤカside)

美術部の部室には私の他に誰もいなかった。

クラスの出し物を決めるときに、私は美術部での没ネタとなった喫茶店を提案した。
そうじゃなければ、春ちゃんは入院しなかったと思うんだ。

因果関係はないと思うけれど。
どうしても自分の責任のように思うんだ……。

私は椅子の上で膝を抱えていた。

「おや、アヤカじゃないか」

先輩部員が部室に入ってきた。
私はドアの方に少しだけ目を向ける。

「今日は部室休みの日だけど、なんで居るのかな」

「ここに居たくて」

彼女は、気分が悪そうね、
と言いかけて「忘れものを取りに来ただけだから」と言い直した。

彼女は私のクラスでの出来事を知っている。
だからかもしれないけれど、そっとしておいてくれた。

「好きなだけ休んでなさい」

そう言って、先輩は美術室を後にした。

辺りは静寂に包まれて、遠くで運動部の声援だけが聴こえる……。
私は携帯電話を開いて彼を呼び出した。

 ・・・