(春音side)

わたしは瞳を輝かせてようにその光景を見つめていた。

黒板の前に立て掛けられた、彩りのあるガラス板。
自分たちが塗った板がこんな風になるなんて思っていなかった。

着物の柄みたいな和風のデザインは、アヤカさんが提案したもの。
どの板も太陽光に照らされて、息を飲む美しさだった。
まるで和風のファンタジアへ誘われるような、そんな神聖な気持ちになってくる。

だから、思わず言葉をこぼしていたんだ。

「きれい……」

……この風景をずっと見ていたいなあ。

すると、ゆう君が撮影を始めた。
パンプレットに使うからって正面でカメラを覗いていた。
どうして?


……彼が撮影している姿がカッコよく思ったんだよ。


半ば衝動的だった。
わたしは知らぬ間に頬を紅潮させてほほ笑んでいた。
いつの間にか、ガラス板じゃなくて君を見ている。

板は明日でも見ることができる。
でも、君が撮影しているところは今しかキリトリできない。
後で写真をもらおう、それがいい。
文化祭が終わった後に現像してもらえるかなあ、今度頼んでみよう。


でも、これから起きることについては、知る由もありません。
だれも想像がつかなかっただろう。

「春ちゃん! 絵の具洗いに行こうー」

と、クラスメイトに呼び掛けられた。

あ。
見とれている場合じゃなかったな、きちんと片付けないと。

今行くよと、声をかけて反応する。
彼には後で話そう、そんなことを考えながら立ち上がる。

でも、そのあとはあまり覚えていません。

立ち上がった時、筆入れに足を取られたことは覚えている。
ガラス板の方に思いっきり転んでしまった……。

身体をぶつけて、切ってしまった。


気づいたら病院のベットの上だったんだ。