(詠夏side)

今日の夜、早めに喫茶店を閉めた私は彼と川のほとりで待ち合わせした。
そう、告白の返事を今日まで先延ばしにしていたんだ。

「告白してくれて嬉しかった……」

私は正直に話そうと決めていたけれど。
なかなかこの先の言葉が喉から出てこなかった。

彼は私の方をしっかりと見つめて待っている。

「貴方のことは素敵な方だと思う。
でも、私はほだされる気持ちにならなかった……」

私の場所は<カフェ・セプトクルール>だよ、そう締めくくった。

彼はありがとうと言って背中を向けた。

どういう訳か春の女の子のことを思い出していた。
私は彼女のように話す相手が欲しいのかもしれない。

彼はお店に来ることはないだろう、
それにはいびつな寂しさを覚えるしかなかった。


これから、夏が影ってくる……。