「ドアツードアで、丁度三十分でしょうか。このビルは朝のエレベーターがかなり混雑するもので・・・」
ころ合いを見計らって鈴村が、
「だいたいの話は土岐君からお聞き及びだと思いますので、さっそく、持参した契約書にお目を通していただけますか?」
と社用の角封筒から、クリアホルダに挟んだワープロで打ち出した書類を取り出した。同じ書類が二部あった。それを受取って、金井が一部をテーブルの上に置き、
「読み上げてよろしいですか?」
とことわって、もう一部の契約書を読み上げた。
「調査研究の依嘱に関する契約書、
第1条、甲(株式会社扶桑総合研究所)は乙(財団法人東亜クラブ)と調査研究の依嘱に関して、以下の契約を結ぶ。
第2条、契約期間は契約締結日より1年間とする。ただし、甲または乙より契約破棄の申し出がない限り、自動的に延長されるものとする。
第3条、甲または乙が双方の人材を使用する場合には、諸経費以外に一人あたり一日、金五万円を支払うものとする。
第4条・・・」
と棒読みが続く。そこで、鈴村の解説が入った。
「一応、機関対機関の対等の契約ということで、
『双方の人材』
という文言にしましたが、要は、土岐君をお借りしたいということです。もっとも肝心なのは、金額だと思いますが、・・・そんなところでいかがでしょうか?ご迷惑をおかけすることになるとは思いますが・・・」
砂田が同調するように傍らでうなずいている。うなずく度に頭頂に逆立っている髪の毛がメトロノームのように揺れる。すこし間があって、金井が答えたが、考え込んでいる様子はなかった。
「結構だと思います。そろそろ、専務理事が昼食から帰ってくるころだと思うんですが、・・・問題はないと思いますので、各条文を精読させていただいて、一応、専務理事の了解を取って、押印して明日にでも宅急便で返送します」
と言いながら、金井は契約書にざっと目を通している。条文は全部で三十条もあり、最後に今日の日付と、株式会社扶桑総合研究所の代表取締役のサインがあり、印が押されていた。
ころ合いを見計らって鈴村が、
「だいたいの話は土岐君からお聞き及びだと思いますので、さっそく、持参した契約書にお目を通していただけますか?」
と社用の角封筒から、クリアホルダに挟んだワープロで打ち出した書類を取り出した。同じ書類が二部あった。それを受取って、金井が一部をテーブルの上に置き、
「読み上げてよろしいですか?」
とことわって、もう一部の契約書を読み上げた。
「調査研究の依嘱に関する契約書、
第1条、甲(株式会社扶桑総合研究所)は乙(財団法人東亜クラブ)と調査研究の依嘱に関して、以下の契約を結ぶ。
第2条、契約期間は契約締結日より1年間とする。ただし、甲または乙より契約破棄の申し出がない限り、自動的に延長されるものとする。
第3条、甲または乙が双方の人材を使用する場合には、諸経費以外に一人あたり一日、金五万円を支払うものとする。
第4条・・・」
と棒読みが続く。そこで、鈴村の解説が入った。
「一応、機関対機関の対等の契約ということで、
『双方の人材』
という文言にしましたが、要は、土岐君をお借りしたいということです。もっとも肝心なのは、金額だと思いますが、・・・そんなところでいかがでしょうか?ご迷惑をおかけすることになるとは思いますが・・・」
砂田が同調するように傍らでうなずいている。うなずく度に頭頂に逆立っている髪の毛がメトロノームのように揺れる。すこし間があって、金井が答えたが、考え込んでいる様子はなかった。
「結構だと思います。そろそろ、専務理事が昼食から帰ってくるころだと思うんですが、・・・問題はないと思いますので、各条文を精読させていただいて、一応、専務理事の了解を取って、押印して明日にでも宅急便で返送します」
と言いながら、金井は契約書にざっと目を通している。条文は全部で三十条もあり、最後に今日の日付と、株式会社扶桑総合研究所の代表取締役のサインがあり、印が押されていた。