入り口から疲れきったような二人のサラリーマンが入ってきた。一人が口に爪楊枝を刺していた。その後ろから別の二人組が大声で会話を交わしながら喫茶店に入ろうとしていた。土岐はレジを済ませてかれらと入れ違いに、〈インサイダー〉の外に出た。そこで岡川と別れた。時刻はまだ一時前だった。雨は小やみになっていた。
土岐は近くの有価証券会館に向かった。徒歩三分ほどだ。その三階の有価証券図書館に入った。受付で入館証とバッジを勝手に受け取り、薄暗い館内に進む。
三十平米ほどの閲覧室に四、五名ほどの証券マンがネクタイを緩めて新聞を読んだり、雑誌に眼を通したりしていた。
受付横の合板のブースにすわり、備え付けの古いノートパソコンで、〈開示情報〉を検索した。
閲覧室の奥の開架の書棚に入って行った。
書架は閲覧室の倍ほどのスペースがあった。世田谷区立図書館と比べると天井も低く、スティール製の書架もメーカーがまちまちで、赤錆が目立つ。壁の白っぽい塗料が剥がれかかって、ひび割れたままめくれ上がっている。
雑誌の登録番号を目当てに、狭い書庫を辿って行くと、一番奥の壁際にまだ製本されていない新着雑誌ばかりの書棚があって、その中に奥沢の世田谷区立図書館で見覚えのある〈開示情報〉が雑然と置かれていた。表紙の左下に図書館の収書のゴム印が押印されている。とりあえず、平成九年から五年分の二十冊を抱えて閲覧室のブースに運んだ。
検索ブースからメモ用紙を二十枚ばかり失敬して、雑誌広告の会社名をメモすることにした。
東証一部上場の大企業は八紘物産だけだった。雑誌に箔を付け、他社の広告を取りやすくするおとり広告の臭いを感じた。八紘物産のような超一流企業の広告媒体としては、〈開示情報〉という雑誌は不釣り合いに思えた。
奥沢の図書館で見たような記憶があったが、あとは聞いたこともないような公認会士事務所と一級建築士事務所と玉井企画という企業の広告だった。広告はおもて表紙うらの表2、うら表紙うらの表3、うら表紙の表4に限られていた。
パラパラと見て行くうちに、掲載場所は一定していないものの〈アイテイ〉という企業のイメージ広告が毎号掲載されているのに気づいた。
土岐は近くの有価証券会館に向かった。徒歩三分ほどだ。その三階の有価証券図書館に入った。受付で入館証とバッジを勝手に受け取り、薄暗い館内に進む。
三十平米ほどの閲覧室に四、五名ほどの証券マンがネクタイを緩めて新聞を読んだり、雑誌に眼を通したりしていた。
受付横の合板のブースにすわり、備え付けの古いノートパソコンで、〈開示情報〉を検索した。
閲覧室の奥の開架の書棚に入って行った。
書架は閲覧室の倍ほどのスペースがあった。世田谷区立図書館と比べると天井も低く、スティール製の書架もメーカーがまちまちで、赤錆が目立つ。壁の白っぽい塗料が剥がれかかって、ひび割れたままめくれ上がっている。
雑誌の登録番号を目当てに、狭い書庫を辿って行くと、一番奥の壁際にまだ製本されていない新着雑誌ばかりの書棚があって、その中に奥沢の世田谷区立図書館で見覚えのある〈開示情報〉が雑然と置かれていた。表紙の左下に図書館の収書のゴム印が押印されている。とりあえず、平成九年から五年分の二十冊を抱えて閲覧室のブースに運んだ。
検索ブースからメモ用紙を二十枚ばかり失敬して、雑誌広告の会社名をメモすることにした。
東証一部上場の大企業は八紘物産だけだった。雑誌に箔を付け、他社の広告を取りやすくするおとり広告の臭いを感じた。八紘物産のような超一流企業の広告媒体としては、〈開示情報〉という雑誌は不釣り合いに思えた。
奥沢の図書館で見たような記憶があったが、あとは聞いたこともないような公認会士事務所と一級建築士事務所と玉井企画という企業の広告だった。広告はおもて表紙うらの表2、うら表紙うらの表3、うら表紙の表4に限られていた。
パラパラと見て行くうちに、掲載場所は一定していないものの〈アイテイ〉という企業のイメージ広告が毎号掲載されているのに気づいた。