「もう一度、監視カメラにもどるか?」
「どこをみるんですか?」
「事件当日の朝から。根津駅から」
 三沢が大きく息を吸った。大田は三沢の肩を叩いた。
「早くしないと、録画が上書きされる」
 三沢が椅子からとびあがった。
「昼飯くってから行きましょう」
 午後いちで根津駅の録画で操子を確認した。その前後の録画データを借用しようとしたら、駅長がコピーを用意してくれた。
 根津駅から大学までの乗り換えを乗換ナビで検索し、最低料金の経路をたどった。乗り換えは2回あった。乗換駅の大手町で操子の録画を探し、その前後の録画データを借用した。大学から蒲田までの乗換駅での録画は後日に回した。

 翌水曜日、三沢は大田が出署するのを待って、画像解析を始めた。事件当日の朝、操子の後ろから、根津駅の改札を通った175センチ以上の男を3人選んだ。この3人の体形をソフトに取り込んで、大手町駅の乗り換え通路の画像と比較する。操子が通り過ぎたあとの1分間の画像を流す。類似度60%で比較すると、5人が抽出された。90%に引き上げるとゼロ件になった。70%の類似度で残った人物の画像を拡大し、カラーコピーをとった。サラリーマン風の男だ。根津駅の画像に戻って、3人の顔と比較する。似ても似つかない。三沢がため息をついた。
「どうします。比較範囲を拡大しますか?」
「時間を食ってしょうがねえだろ」
「いや、オート設定にすれば、勝手にやってくれます」
 大田が腕組をといた。
「どうするんだ」
「根津駅の画像をオリジナルにして、大手町の画像を対象とするだけです。操子が通ったあとの根津駅の何分間かの画像を、大手町の何分間かの画像と比較させるか。それと類似の設定パーセントをどの程度にするか」
「犯人が、操子が大手町で乗り換えるてえことを知ってれば、根津駅ではそれほど接近する必要はないな」
「でも、同じ電車に乗らないといけないから、3分以上後ろだと尾行できない」
「じゃ、根津駅は3分に設定するか」
「大手町の乗り換え通路は?」
「そっちも3分にするか」
「そうですね、操子の大学を知っていれば、そんなに接近する必要はないですね」
「類似度は?」
「90パーでいいだろう、とりあえず」
 三沢はソフトにデータを打ち込んだ。大田はその動作を不審そうに見ながら、