「ただいま」
また由美さん達は『EDEN』に行っているのか家には誰もいなかった。
結局この家もわたしの居場所ではなかったということだろう。肉親に捨てられたのだ。なら親戚という名ばかりな他人の家だってそんなわたしの居場所になるはずがなかった。
家に上がってすぐに自分の部屋に向かった。
ドアを開けるといつものわたしの部屋。
物も少なく必要最低限のシンプルな部屋。
においも何もない部屋。
まるで誰も住んでいないかのような部屋。
改めて見ると本当に何もない。まるで無色だ。
今思えば由美さんに嫌な顔をされたことはあっても怒られた覚えがないのも、もしかしたらこういうところから得体が知れない、可愛げがないみたいに思われていたからかもしれない。
わたしは着替えなどの明日の準備を始める。
そういえばどんな格好で行けば良いんだろう。もし許されるなら制服が良いけど、ダメだよね。もしかして貰った資料に載ってるかな。
資料をペラペラと流し読みするとそれらしき記述を見つける。そこには安全面を考慮し、専用装備以外は不可とあり、がっかりする。
「やっぱりダメか」
高校生としてのわたしが行くから意味があると思ったけど決まりなら仕方ない。
『シマ』は危険って別れ際にも上山空将にも散々言われたし、何か武器でも持っていこうかな。
そんなことを考えているうちに日は落ち、玄関のドアを開ける音とともに由美さん達が帰ってきた。
昨日までのわたしなら変わらない日として何も思わなかっただろうが、今のわたしには由美さん達と同じ空間にいることが苦痛に感じる。その理由はよくわからなくて曖昧。
でもこの感情を感じているうちに二人にわたしの今したいことを言うべきだと思い、準備をしていた手を止めて部屋を出て一階のいつも由美さん達のいるリビングへ急ぐ。
リビングに着き、目を合わせるなり由美さん達にいつものように『変』と言われたが気にせずわたしは伝えようとする。
「わたし、明日……えっと」
しかし勢いだけで来てしまっため、なんて伝えるか考えていなく、急いで考える。
『シマ』に行く。これは『シマ』という言葉自体が口外禁止だからダメ。
軍のところにお世話になってくる。これはなんか軍に迷惑かけるみたいで好きじゃない。
今したいことをしてくる。これは何したいかわからないし、うーん。どうしよう。
わたしが黙り込んでから十数秒だった頃、陽一さんが口を開いた。
「どこかに行くのか?」
由美さんもそれに続くように心配そうな顔をして口を開いた。
「それって、危ないところじゃない? 大丈夫なの?」
そんな心配の言葉を言われるとは言ってもみなくしばらく思考が停止した。
「もしかして気分とか悪い?」
「大丈夫。てっきり一方的にわたしが話して終わりだと思ってたのに、心配されるなんて」
「心配するに決まってるだろ?」
「なんで……」
「そんなん親だからに決まっているだろう。確かに俺らはお前の本当の親じゃない。だけどそれは書類上の問題だ。俺らはサクラのことを本当の娘のように思ってる。これが心配する理由だ。それで何をするんだ? 言ってみなさい」
あまりにも速く変わっていく二人のイメージにわたしの思考は追いついていなく、思わずたじろぐ。
「えっと……」
「言いづらいなら言わなくていい。だがそれを意思を持って最後までやり遂げなさい。俺から言えることはここまでだ」
由美さんは近づいてきてわたしの手を握ったが、わたしは無意識にその手を振り払ってしまう。
「あっ。これは」
「いや良いの。ごめんなさい。でもこれだけは約束して。ちゃんと帰ってきて」
「あ、えっ。う、うん。わかった」
出来ない約束をするとわたしは逃げるように自分の部屋に戻った。
何あれ。
今まで感じたことのない他人からの感情を感じてわたしは混乱していた。
数年越しの驚きの新事実。でもわたしは思った。
由美さん達はわたしの親になろうとしようとして不器用になっていただけだったんじゃないかと。
由美さん達が本音で言っていたからなんて、あんなことを言われ慣れているわけじゃないわたしにはわからないけど、本音だと良いなとわたしは思った。
また由美さん達は『EDEN』に行っているのか家には誰もいなかった。
結局この家もわたしの居場所ではなかったということだろう。肉親に捨てられたのだ。なら親戚という名ばかりな他人の家だってそんなわたしの居場所になるはずがなかった。
家に上がってすぐに自分の部屋に向かった。
ドアを開けるといつものわたしの部屋。
物も少なく必要最低限のシンプルな部屋。
においも何もない部屋。
まるで誰も住んでいないかのような部屋。
改めて見ると本当に何もない。まるで無色だ。
今思えば由美さんに嫌な顔をされたことはあっても怒られた覚えがないのも、もしかしたらこういうところから得体が知れない、可愛げがないみたいに思われていたからかもしれない。
わたしは着替えなどの明日の準備を始める。
そういえばどんな格好で行けば良いんだろう。もし許されるなら制服が良いけど、ダメだよね。もしかして貰った資料に載ってるかな。
資料をペラペラと流し読みするとそれらしき記述を見つける。そこには安全面を考慮し、専用装備以外は不可とあり、がっかりする。
「やっぱりダメか」
高校生としてのわたしが行くから意味があると思ったけど決まりなら仕方ない。
『シマ』は危険って別れ際にも上山空将にも散々言われたし、何か武器でも持っていこうかな。
そんなことを考えているうちに日は落ち、玄関のドアを開ける音とともに由美さん達が帰ってきた。
昨日までのわたしなら変わらない日として何も思わなかっただろうが、今のわたしには由美さん達と同じ空間にいることが苦痛に感じる。その理由はよくわからなくて曖昧。
でもこの感情を感じているうちに二人にわたしの今したいことを言うべきだと思い、準備をしていた手を止めて部屋を出て一階のいつも由美さん達のいるリビングへ急ぐ。
リビングに着き、目を合わせるなり由美さん達にいつものように『変』と言われたが気にせずわたしは伝えようとする。
「わたし、明日……えっと」
しかし勢いだけで来てしまっため、なんて伝えるか考えていなく、急いで考える。
『シマ』に行く。これは『シマ』という言葉自体が口外禁止だからダメ。
軍のところにお世話になってくる。これはなんか軍に迷惑かけるみたいで好きじゃない。
今したいことをしてくる。これは何したいかわからないし、うーん。どうしよう。
わたしが黙り込んでから十数秒だった頃、陽一さんが口を開いた。
「どこかに行くのか?」
由美さんもそれに続くように心配そうな顔をして口を開いた。
「それって、危ないところじゃない? 大丈夫なの?」
そんな心配の言葉を言われるとは言ってもみなくしばらく思考が停止した。
「もしかして気分とか悪い?」
「大丈夫。てっきり一方的にわたしが話して終わりだと思ってたのに、心配されるなんて」
「心配するに決まってるだろ?」
「なんで……」
「そんなん親だからに決まっているだろう。確かに俺らはお前の本当の親じゃない。だけどそれは書類上の問題だ。俺らはサクラのことを本当の娘のように思ってる。これが心配する理由だ。それで何をするんだ? 言ってみなさい」
あまりにも速く変わっていく二人のイメージにわたしの思考は追いついていなく、思わずたじろぐ。
「えっと……」
「言いづらいなら言わなくていい。だがそれを意思を持って最後までやり遂げなさい。俺から言えることはここまでだ」
由美さんは近づいてきてわたしの手を握ったが、わたしは無意識にその手を振り払ってしまう。
「あっ。これは」
「いや良いの。ごめんなさい。でもこれだけは約束して。ちゃんと帰ってきて」
「あ、えっ。う、うん。わかった」
出来ない約束をするとわたしは逃げるように自分の部屋に戻った。
何あれ。
今まで感じたことのない他人からの感情を感じてわたしは混乱していた。
数年越しの驚きの新事実。でもわたしは思った。
由美さん達はわたしの親になろうとしようとして不器用になっていただけだったんじゃないかと。
由美さん達が本音で言っていたからなんて、あんなことを言われ慣れているわけじゃないわたしにはわからないけど、本音だと良いなとわたしは思った。