翌日。わたしはいつもよりも軽い足取りで学校に向かっていた。
 理由はもちろん昨日のこと。誰かに悩みを打ち明けたことなんてなかったから、悩み自体は解決せずともこんなに心が晴れるなんて知らなかった。
 今日なら通学中にスキップだって出来そうだ。
 そんなことを考えていると気付けば学校に着いている。いつものように周りからは変わらず『変』と言われているが今のわたしは無敵。今までも特に思っていなかったけど今日はまるで背景のように全く気にならない。
 わたしは今日もいつもと同じように教室のドアを勢いよく開く。
 教室にはもう登校しているナリがいたので近づき、話しかける。
 「おはよう。ナリ。昨日は改めて話を聞いてくれてありがとう。おかげで気持ちが軽くなったよ」
 「……」
 いつもなら逆だけどわたしから声をかけたからなのか、反応がない。
 「どうしたの? ナリ。なんか変……だよ」
 するとナリはこちらに視線を向ける。
 その瞬間わたしは気付いてしまった。
 この目は同じだ。
 「あのどちら様ですか? あなた……『変』ですね」
 ドバッと自分の内側から流れ出そうになった感情を押し殺そうとわたしは拳を強く握り締め、噛み締める。そして代わりにナリの机に一滴、また一滴と涙が落ちる。すると教室がざわめきだした。
 もう視線すらこちらに向けなくなったナリにわたしは泣くことしか出来なかった。
ナリが裏切ったわけじゃない。誰かがこうなるようにしたのだ。
 でもその誰かがこうしなければならなかったのはおそらくわたしが現状を変えたいと望んだからだ。
 そう思った瞬間、教室を飛び出しわたしは走り出していた。
 怒りの向ける矛先のわからぬまま、わたしの行き先だけは、はっきりとしている。
 わたしは一人。友を残し、一度として振り向かず進む。