夏の陽が遠く感じる。
視界が霞む。

ぼんやりとした思考回路で考えてみる、どうしてこんな風になったのかを。

いつも嫌だった。

『夏澄は絶対断らないもんね』

『先生もあなたなら、安心して任せられるわ』


決めつけられるのも。

それを断れないわたしもーー……


だから逃げたんだ。

ネットで偶然行き着いたウワサが、嘘でも真実でもどちらでもよかった。

何時間もかけて電車を乗り継いで、たくさん歩いて、『蒼の森』に入ってーー途中足を滑らせて、私は深いところへ落ちていった。ここがどこなのか、正直よくわからない。

水の音がする……

その時声が聞こえた。感情のみえない、透き通った声が。

「何してるの?」

だれ……

唇は動かない。

「……喋れないの、ふーん」

…………蒼い、蝶…………?

夢か現かーーとても綺麗な、蒼い蝶を見た。

蝶はヒラヒラ舞いながら、次第に遠ざかってゆく。もう二度と会えないような気がして、必死に手を伸ばした。

あともう少しーーのところで、ハッとする。そこにいたのは蒼い蝶じゃない。

目の前にいたのはとても綺麗な少年だったから。