*中学三年生の秋 

 私は、彼の事をよく目で追うようになっていた。
 彼は見た目も華やかで、いつも人を笑わせていた。彼は優しいから人を笑わせる時、決して誰かを傷つける技を使う事はなかった。
 困っている人がいたらすぐに手を差し伸べていた。だから委員会の時、友達のいない私に気遣って話しかけてくれているのかな。なんて彼を観察していると思ってきた。
 
 こんな素敵でキラキラしている人と付き合うのはきっと同じようなキラキラした人なんだろうな。きっとそうだと思うけれど、想像だけなら良いよね。

 私は、彼がもしも自分と付き合ったらどうなるのかを想像した。一緒に手を繋いで登下校したり、休日公園デートしたり。寝る前に特別な用事はないのだけど、電話をして「おやすみ」って言う。現実ではありえない夢の世界を、ふたりで幸せに過ごす日々を頭の中でくるくると巡らせていた。人と会話をするのが苦手な分、想像が得意だったから、ずっとその想像は続けられる。

 想像を楽しんでいた矢先、彼には彼女が出来た。想像の世界は、ぴたりとすぐに終わった。
 
 やっぱり、そうなるよね……。

 彼がお付き合いした相手の事を私は「水野さん」って呼んでいるけれど、ほとんどの人が「あかりちゃん」って呼んでいて、周りに親しまれていた。ちなみに私は学校で下の名前で呼ばれたことはない。
 彼女は朝、太陽のような笑顔と明るくて可愛い声でみんなに「おはよう!」と自ら声をかけている。もちろん私にも言ってくれる。私は聞こえるか聞こえないかの小さな細い声で「おはよう」と答える。
 うちの学校は全学年で女子が約二百人いるのだけど、可愛いランキングがもしもあったのなら五位以内には入る、性格も明るくてキラキラした女の子だった。本当に釣り合いのとれたカップルだった。
 
 彼女と話して幸せそうにしている彼を見ていると、心が痛くなった。なんだろう、心臓をえぐられた感覚。まるでジェンガの大切な支えの部分が抜き取られたような、頭の中がぐらぐらしている感じがする。見なきゃいい話なのに、彼のひとつひとつの仕草が気になるから見ちゃう。目で追っちゃう。
 
 
 ――片想いは切ない世界。