君のいない世界に、あの日の流星が降る

 日曜日の夕暮れは、みんな早送りで動いているみたい。
 改札口から流れ出る人、スーパーの袋を抱える親子連れ、部活帰りの学生たち。
 残り少ない休日を家で過ごすために、誰もが家路を急いでいる。

 駅前のファーストフードは、持ち帰りの行列が伸び、店内で食べているのは数組程度だった。
 雨はこの数日降っておらず、カサを手にする人も少なかった。
 今週は結局学校には行かず、図書館に通い詰めてしまった。
 親も気づいているみたいで、一度だけ聞かれたけれど深くは追及してこなかった。
 もう月末近いから、あと少ししか時間がない。

 七夕までのカウントダウンははじまっている。
 流星群のニュースや特集も毎日のようにテレビで流れている。
 そのためには行動を起こすしかない。
 自動ドアが開き、待ち人が急ぎ足でやってくるのが見えた。

「遅くなってごめんなさい。思ったより仕事が長引いちゃって」

 星弥のおばさんは休日出勤だったらしく、紺のスーツ姿にバッグを肩にかけていた。

「いえ、こちらこそ急にすみません」

 あらかじめ買っておいたアイスコーヒーを差し出す。
 もう氷は半分以上溶けているかもしれない。

 財布を取りだそうとするおばさんを止め、
「今日はすみません」
 と謝った。

 星弥のおばさんとふたりきりで会うことに決めたのは、あの日から過去の夢を見なくなったから。
 どんなに願っても、過去どころか、夢自体を見られなくなっていた。
 もう流星群が来るまで時間がない。だから、現状を打破したかった。

「大事な話、って一周忌のことよね? 参列するのはやっぱり難しい?」

 なにも言わなくても、私の傷を理解してくれている。
 誰もがそうだ。
 うちの親や空翔、樹さんだって、星弥の死を悼みながら、悲しみのなかで動けない私を心配してくれている。

「大丈夫だと……思います」
「ムリしないでね。私もやっとここのところ『あ、息してる』って思えるようになったんだから。仕事に復帰したおかげで気持ちが紛れているのかな」
「はい」

 うなずく私におばさんは目を細めてほほ笑んだ。

「でも、月穂ちゃんから連絡が来てうれしかった。ずっと話がしたかったから」
「私も、です」