期末テストまではまだ日があるし、やっぱり今日は帰ろうかな……。

 そんなことを考えていると、
「おはよう」
 うしろから声がかかった。
 驚いてふり返ると、村岡麻衣が立っていた。

「あ、おはよう。ぼーっとしてたからびっくりしちゃった」

 村岡麻衣はベンチの右隣にどすんと腰をおろした。
 ショートボブの髪がさらりと揺れ、大きな瞳が私を見つめる。

「さっき校門のところで見かけてさ、『月穂』って声かけたけど気づいてくれなかったから、必死で追いかけてきちゃった」

 呼吸を整えようと大きく深呼吸する麻衣に、私は意識して笑顔を見せる。

「そうだったの? 全然気づかなかったよ~」

 ぷうと麻衣は頬を膨らませた。

「二週間ぶりの再会なのに冷たいこと」
「ごめんごめん。私もさみしかったよ」

 はしゃぐ私に麻衣は首をかしげた。

「体調はもういいの?」
「え?」と聞き返して慌ててうなずく。
 学校を休みがちな理由を、体調不良にしていることを思い出したから。
 元気な笑顔は不向きだったかもしれない。

「まだ本調子とは言えないけど、少しずつ……かな」

 さっきより声のトーンを落とした。