「今から病院へ行こう」
「え、今から?」
「まだ午後の診察は終わってないはず。かかりつけ医ってどこ? そこで受診して、でもきっと精密検査は大きな病院だから紹介状をもらって――」
「落ち着けって」

 グイと引っ張られる手に、星弥を見おろす。
 同時に、周りの景色がゆがみだしているのがわかった。

 ああ、夢が終わりを告げている。

 夢が終わったなら、私は過去の自分に戻ってしまうのだろう。
 病院を薦めたことも忘れ、たくさんのてるてるぼうずを作って終わるんだ。

「私、今日は帰るね」
「……なんで? 俺、なんか怒らせた?」

 眉をひそめる星弥に「ううん」と目を見たまま答えた。

「ちょっと用事思い出しただけ。星弥は病院へ行って。お願いだから約束をして」

 星弥は納得できないような顔をしていたけど、ふっと肩の力を抜いてうなずいた。

「よくわからないけど、わかった」
「約束だよ。じゃあ、またね」

 リュックを手に部屋を出た。
 急がないとどんどん景色がゆがんでいく。

 階段をかけおり、リビングに続くドアを開けた。