「ああ!」

 思わず大きな声を出した私に、星弥はきょとんとしている。

「どうした?」

 そういえば、さっきから自分の意志で話ができている。
 病気のことを星弥に伝えられたなら……運命を変えられるのかもしれない。

「……星弥?」
「ん?」

 紐をハサミで切りながら星弥が答えた。

「今からヘンなこと言うけど、聞いてくれる?」

 大丈夫、今日はちゃんと声になっている。
 いぶかしげに私を見たあと、星弥は「いいよ」と言った。

「前に、背中が痛いって言ってたよね? 病院には行ったの?」
「いんや。俺、病院苦手だからさー」

 てるてるぼうずに目を書いた星弥が「できた」と私に見せてきた。
 うなずくこともできず、私は姿勢を正す。

 言わなくちゃ、早く言わなくちゃ。

「すぐに病院へ行こう」
「へ? 病院って、今から?」

 冗談と思っているのだろう、星弥はクスクス笑った。

「そう、今から。すぐに検査をしてもらって――」
「落ち着けって。もう痛くないから大丈夫だよ」
「違う。大丈夫じゃない。大丈夫じゃ……」

 あふれる涙が声を詰まらせ、うまく話せなくなる。
 星弥が病院に行く時間を早めることができれば、未来は変わるかもしれない。