「うん。いくつ作るの?」
「どうだろう。二年分だから七百個以上目標かな」
「それはムリでしょ。お店が開けちゃうレベルだし」

 折り紙より少し大きなタオル生地に星弥が丸めたティッシュを詰め、首の部分を青い紐でしばった。
 手のひらサイズのてるてるぼうずだ。

 最後にマジックで目を書くが、ゆがんでしまいおもしろい顔になっている。
 ゲラゲラ笑い、それから私たちはしばらくてるてるぼうず作りに没頭した。

 雨の音も聞こえないくらい、集中して何個も作っていく。

「うちの親、なんか言ってた?」

 あぐらをかいた星弥が、てるてるぼうずに目をやったまま尋ねた。

「星弥はいつもにぎやかだって。お風呂で熱唱してるって言ってた」
「ひでえ」

 クスクス笑い、そしてまた黙る。
 沈黙すらも愛しいと思える人。
 あの日もそう感じたんだ。

「月穂も親と仲いいじゃん」
「まあ、そうだね」
「なんだかんだ言っても、家族っていいよな」

 こんな会話をした記憶がなかった。
 きっと、私が先にてるてるぼうずの話をしたところから運命は分岐しているんだ。

 運命? 

 違う、これは夢のなかだけの出来事のはず。
 でも、現実に起きたことと違う行動をすることで、運命が変わるとしたら……。