星弥の部屋へ来るのはこれで五回目だ。
 星弥の部屋はまるで小さな図書館。
 違うのは、絨毯に読みかけの本が散らばっていること。
 慌てて本を片付ける星弥を、絨毯に座って眺める。

 ああ、この夢が醒めなければいいな……。

 ローテーブルに向かい合う形で座る。
 明日は英語のテスト。
 ふたりとも大の苦手科目だからがんばらないといけない。

 が、星弥はテーブルの上にエコバッグから白い布の束を取り出して置いた。

「これから、ふたりで協同作業をするんだよ」
「え、なに?」
「俺調べによるとさ、七夕は今日みたいに雨になることが多いんだってさ」

 星弥は天井をうらめしそうに見あげた。

「あ、うん。今日は残念だったね」
「下見にはまた行けばいいけど、二年後の七夕に流星群が見られないのは困る」

 そうか、思い出した……。

「だから」と言いかけた星弥に、私は「てるてるぼうず」と口にしていた。
 これは過去にはなかった出来事だ。
 自分の意志で言葉にできたことに驚いてしまう。

 ニカッと花火が咲くように星弥は笑った。

「さすが月穂。俺の考えてること、わかってくれたんだ」
「ううん、なんとなくだよ」

 思い出したから、とは言えず、布の束から一枚受け取った。
 あの日、星弥は『二年後の七夕に向けて、ふたりでてるてるぼうずを作ろう』と提案してくれた。

「二年後の七夕に向けて、ふたりでてるてるぼうずを作ろう」

 ほら、やっぱり。