カルピスを口に運べば、味まで感じられるから不思議。甘さが心の壁を溶かしていくみたい。
 現実世界の自分を客観視できたことを、目覚めてからも覚えていますように。
「ただいまー」

 ドアが開く音と同時に星弥の声がした。

「いやぁ、まいった。時間かかったかかった」

 エコバッグを下げてキッチンに入ってきた星弥が私を見つけてほほ笑む。

「おかえりなさい。彼女を待たせてひどい子ね」

 おばさんが文句を言うと、星弥は私に向かってぱちんと両手を合わせた。

「ごめん。なんか、近くの100均になくってさ、探し回ったんだよ」
「なにか買ってきたの?」

 そう尋ねると、星弥は壁時計を見やった。

「それは俺の部屋でネタバラシってことで」

「あら」
 とおばさんが異を唱えた。

「私には内緒なわけ?」
「そうそう。ヒントは『流星群は奇跡を運んでくる』ってとこかな。月穂、行こう」
「うん。ごちそうさまでした」

 おばさんに礼を言ったあと小声で「あとで報告します」と伝えた。