流星(りゅうせい)が……あ、あの子のお兄ちゃんが大学で東京に行ってから、ますます子供っぽくなっちゃって」
「男の子ふたりですもんね」

 流星さんとは会ったことがないけれど、写真は何回か見せてもらったことがある。
 ううん、お葬式の日に会ったっけ……。

「私も月穂ちゃんみたいな女の子がほしかったな」

 ほう、と息を吐いたおばさんに、私は眉をひそめてみせた。

「うちの母は、『男の子がよかった』って言ってますけど」
「あら。ないものねだりなのかしら」

 おばさんと話をしていると、心がやわらぐ。
 まるで家族のように接してくれるおばさんが好き。
 ……好きだった。

 これまでも昔の夢を見ることはあった。
 どれも現実にあったことと、そうでないことが混在しているような夢ばかり。

 でも、最近見る夢は、自分でも忘れていたような細かいことまですべてが実際に起きたことばかり。
 記憶にフタをしたせいで、一気に思い出があふれ出ているのかもしれない。

「月穂ちゃんのおうちはどんなふうなの?」

 おばさんの質問に「ああ」と夢のなかの私は勝手に口を開いていた。

「うちはいたって普通です。父も母も私以上におしゃべりだから、いつも誰かが話をしているんです」
「にぎやかそうね」
「にぎやかっていうより、騒音レベルかも」

 そう言ってから気づく。
 昔は我先にとしゃべっていた家に、無音をもたらしたのは私だ。
 悲しみに打ちひしがれ、上っ面でしゃべるようになった。