「だから絶対に悪いことを言わないようにしてる。言霊ってのがあって、悪いことを言うと、その言葉に引っ張られてしまうこともあるみたいだし」
「悪いこと……」
「そう。だから俺の星読みでは、絶対にいいことばかりを言うようにしてるんだ」

 自慢げに笑う星弥に、私は今どんな顔をしているのだろう?
 星弥は病気で死んでしまう。
 その事実を、今になって思い出した。
 夢の世界では自分の意志がたまに途切れてしまう。

 すぐに星弥に伝えなくちゃ、と顔をあげる。

「あの、星弥――」

 口を開くと同時に、ぐにゃりと周りの景色がゆがんだ。
 あ、夢が終わるのかも。

 待って、まだもう少しだけ。
 彼に病気のことを伝えるまで――。

 声にならないまま世界はくるくる回りだし、視界は星のない夜のように暗くなる。

 気づくと私は木でできた椅子に座っていた。
 同じく木製のテーブルの上に置いた自分の手が見える。
 家の椅子じゃない。

 ここは……星弥の家だ。

「はい、どうぞ」

 ハッと顔をあげると星弥のお母さんがグラスを私の前に置くところだった。
 キッチンにある小さなテーブルに私はついていた。