「わかったよ。行けばいいんだろ」
「うむ」

 空翔は私のほうへ来ると、
「月穂の彼氏、ちょっと強引なんですけど」
 とボヤいてから教室を出て行った。

 思わず笑ってしまう。
 ああ、この頃はこんな風に笑えていたんだな。
 同時に今日、空翔とケンカしたことを思い出した。

 なんか、罪悪感。

 空翔は心配してくれていたのに、素直に受け止められなかった。
 空翔は私に、ちゃんと思い出にしてほしかったんだよね……。
 時間差で理解することばかり。

「ごめんごめん、お待たせ」

 星弥の声に我に返った。

「ううん。それより大丈夫なの?」

 リュックに荷物をしまいながら尋ねると、星弥は肩をすくめた。

「それぞれの立場があるからさ。先輩だって外野から色々言われてて大変なんだよ。OBの立場じゃないと見えないこともあるからさ。でも、けっこういい人なんだけどね。逆に、空翔は空翔でプレッシャーもあるだろうし」

 どちらの味方もするやさしいところが好きだった。
 二年前に感じた想いを再確認している。

 窓から空を見あげるあごのラインも好き。

 ポケットに手を入れて目を細めるのも好き。