星弥が亡くなったあと、誰もが私をなぐさめてくれた。
 やさしさを感じながらも、心のなかでは傷ついていた。

 真っ暗い穴に落ちていく感覚。
 底なんてどこにも見えない。
 窒息するほどの苦しみは、ほかの誰にもわからない。
 そう思っていた。

「きっと励ましてくれている、ってわかってはいるんですけどね」

 悲しく笑みを作る樹さんに小さくうなずく。

「悲しみに暮れている人に……どんな言葉をかければいいのですか?」

 やさしい人たちに冷たくすることしかできなかった。今も、まだ続いている。
 樹さんは私の足元あたりに視線を向けた。

「一緒に暗闇に落ちよう。あなたがのぼる気になったら一緒にのぼろう。一緒に悲しんで傷つこう。雨の日には一緒に濡れよう。私なら、そう言います」
 誰もが悲しみを乗り越え、毎日を生きていく。だけど、私にはそんな日は訪れないと思っている。どんなに体験談を語られても、共鳴なんてできなかった。

 でも、樹さんの言葉は胸にじんわりと温かく心に染みている。

「流星群がもうすぐ来ますね」

 急に、世間話のような口調になった樹さんが奥の本棚を指さした。

「読んでおられた本はまだ同じ場所にあります。今年の流星群について詳しく書いてありますから」