そこでふと気づく。

 今、ふたりで登校してしまったら、麻衣はどう思うのだろう。
 私と空翔との関係を疑うのは目に見えている。

 どうしよう、と思っているうちに昇降口まで来てしまった。
 のろのろと靴を履き替えていると空翔が廊下の先を指さした。

「保健室の先生に報告してから行くわ」
「あ、わかった」
「んだよ。なんかうれしそうじゃん」

 ちょっとした感情の変化を見抜くのも、長年の間柄からか。
 まさか麻衣のことを言うわけにもいかず、あいまいにほほ笑んでから奥へと進んだ。
 ちょうどチャイムが鳴りだし、二時限目の終わりを告げている。
 いろんな教室からざわつく声が聞こえ、二階に着く頃には何人かの生徒が廊下に出ていた。

 教室に入ると、何人かが私を確認して声をかけてくれた。

「大丈夫?」「具合、悪いの?」「顔色よさそうだね」

 自然に笑みを顔に貼りつける私。

「大丈夫だよ」「今日は元気」「ノーメイクだけどね」

 心配させないような答えを選べば、クラスメイトは自分たちの会話に戻っていく。
 『体の弱い白山月穂』という設定は浸透しているようだ。